水を用いた新しいレーザー推進の方法についての実験と数値計算に関する研究を “Numerical simulation of a laser-induced bubble of new laser propulsion method inhaling water” と題してまとめた論文が,国際的な英文誌 Applied Physics A: Materials Science and Processing に掲載されました.(論文はここから見られます)
水を用いたレーザー推進は,通常はレーザーアブレーションやブレイクダウンで水を吹き出し,その反作用で水を噴出した方向と逆方向に推進するのですが,今回は水を噴出した方向と同じ方向に推進するという,一見運動量保存則に反する動きをする現象に関する研究をまとめました.元々は水を噴出した方向と逆方向に進む方法の比較として学生がやってみた実験で,動くと思っていなかった物が動いたどころか,通常の方法よりも大きく動いたという驚きの結果がこの研究のきっかけでした.
この一見謎だった現象について,水中のアルミニウムへのレーザ照射によって生じたレーザー誘起バブルが水を一旦噴出した後に,吸い込むような挙動をすることにより,その吸い込む水の逆方向にターゲットが進む,ということがコンピューターシミュレーションによって明らかになりました.
今回は水中のアルミ板のレーザーアブレーションを利用していますが,以前私たちが研究していた Metal-Free Water Canon という方法を使えば,水中でのブレイクダウンだけで上下運動が実現出来る可能性があります.すなわち,レーザーと水の相変化だけで動くエンジンが出来るのではないかと考えています.
学生のただの思い付きの比較実験から,新しい発見があるという面白い例です.ダメだと思うからやらない,ではなく,ダメかもしらんけれどもやってみよう,という姿勢はとても大切だということを改めて考えさせられる良い機会でした.
レーザー学会誌「レーザー研究」に水を用いた新しいレーザー推進の解説論文が掲載されました! | 東京工科大学 大久保研究室 NEWS+独り言
[…] 『「レーザー推進の最近の動向」特集号』に「レーザー誘起バブルによって水を吸い込む新しいレーザー推進の数値計算」というタイトルで解説論文を書かせて頂きました.基本的には以前Applied Physics Aに掲載された論文の内容をまとめました. […]